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無題

monsoon photo

祖母の写真を撮っていきます。

僕個人の感覚では「痴呆」へと症状が変わっているのだけれど、
医者の言葉を信じるならば「年相応の物忘れ」がおきている彼女に必要なのは
人と会って話をしたり、何か新しい刺激を受ける事。

1分前の話を繰り返す彼女には、おそらく僕との会話は記憶に残らないのだと思う。
それでも僕は自分のできる何かをしてあげたい。

「こんなしわくちゃのばあちゃん撮ったってフィルムがもったいないよぉ。」

何度も繰り返されるその言葉は、気持ちの表れなのか、
それとも自分で喋った事を忘れてしまうからなのか。

こんなにも明確な意志を持ってシャッターを切るのは初めてです。